虎之介ちゃんは6歳の男の子です。ふだんは元気がよくてとても写真が撮れないような子です。
先日、呼吸がぜぇぜぇしてということで来院されました。診察や検査、話しているうちに虎之介ちゃんの呼吸が苦しくなっていって、酸素濃度が濃いお部屋に入ってもらわないとうまく酸素を取り込めない状態になってしまいました。
レントゲンで肺の状態はきれいそうだったのですが。。。
なんか喉元の空気の通り道に変な円形のものが写っていました。
虎之介ちゃん、口を大きくあけて喉の奥をみるのに麻酔をかけなければなりません。仮にこれがあまりよくない腫瘍とかでしたら面倒な手術になってきて、とても私の手では負えないと感じていました。
以前私が勤めていた、新潟市の病院の先生方に「これどうしたらいいと思います」と聞いてみたら、「唾液腺嚢胞かもしれないから麻酔かけて針さしてみれば」と助言をいただきました。
唾液腺嚢胞は原因がよくわからないのですが、口の中や顔周りの皮下に唾液が溜まってしまう病態です。腫瘍ではありません。
助言もあり、呼吸状態に気をつけながら麻酔をかけました。麻酔がかかって口を開くと喉の奥の方から液体が溜まったようなものが出てきました。サイズが大きく、気管挿管するのに邪魔になってしまいましたので、針で少し液体を抜いてから挿管しました。抜けてきた液体はゼリー状のネバネバした液体で唾液が考えられました。
少し液体を抜いてから写真を撮ったので嚢胞がしぼんでしまいましたが、ちょうど気管の入口の根本から嚢胞ができていました。
嚢胞を鋏で切って、内部の肉芽と余分な粘膜を切除して処置は終了です。
処置後のレントゲンです。わかりづらいのですが、円形のものがなくなりました。挿管した管が抜けそうじゃないかというつっこみは入れないでください。
自分自身、口の中とか顔周りの皮下に唾液腺嚢胞ができた症例は何度か見たことがあるのですが、喉の奥の方にできた子ははじめてでした。
本当は、その以前勤めていた新潟市の病院にCTを撮って原因を追究+手術をお願いしようと考えていましたが、上越市から新潟市への移動中に呼吸困難になってしまうおそれがあったため、当院で処置をさせていただきました。思い切って処置してみてよかったです。
術後1週間経ち、昨日再診にきてもらったのですが、元気が出てきて写真もこのような感じです。最初の虎之介ちゃんの写真は麻酔から覚めたばかりの写真でまだまどろんでいたときに撮らせていただきました。
1ヶ月後に再発していないかどうかレントゲンで確認です。また元気な姿で来院してください!
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